アスベストとは何?特性と有害性から問題点をわかりやすくまとめてみた

「アスベスト」と言えば、「体に悪く健康被害があるもの」というのは知っていても、どんなもので人体にどのような影響があるのか、までは知らない人も多いと思います。

でもアスベストの問題は、他人事で済ませることができない大きな問題なのです。

そこで、アスベストとは何か、どんな特性や有害性があるのか、できるだけわかりやすく簡単に説明してみます。

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アスベストとは何か?

アスベストは石綿とも呼ばれています。

「石綿」という名前通り「綿のような石」のことをアスベストと呼んでいるのです。

石綿の種類

アスベストの組成は「ケイ酸塩鉱物」と言われるごく普通の石です。

地球の地殻はほとんど「ケイ酸塩鉱物」でできていると言えるほどありふれたものです。

その石が、髪の毛の5,000分の1という細い繊維の形になっているのがアスベストです。

硬い石でも、ここまで細いとふわふわした綿のような感触になります。

アスベストは、石の種類によって蛇紋石系と角閃石と大きくふたつに分類されます。

角閃石アスベストの方が悪性で規制も早かったのですが、国内で使われていたアスベストの9割以上は蛇紋石系アスベストなので、こちらを念頭に置いて説明します。

ケイ酸塩を作る生物

ケイ酸塩は鉱物として存在しますが、自分でケイ酸塩を作る生物もいます。珪藻という藻の一種はケイ酸塩で殻を作って身を守っています。
その珪藻の殻が化石になったものが、珪藻土です。

アスベストの特徴と用途

アスベストは天然に産出される安くて燃えない繊維です。

そう考えると用途がかなり広いことが想像できると思います。

例えば、アスベストで布を作ると燃えない布のできあがりです。

この布は、実際にエジプトでミイラを包む布として使われていました。

「竹取物語」に出てくる燃えない「火鼠の皮衣」のように、燃えない布の話は色んな国にあって、その正体はアスベストではないかとも言われています。

近代に入ってからは、ブレーキパットやクラッチ板、シール材、保温材など工業用途にも使われるようになります。

そして一番利用が多かったのが、建造物です。

何しろ、断熱材、防火材、防音材、保温材と何役もこなす万能な材料で、安く手に入るものですから。

アスベストは、その応用範囲の広さから奇跡の鉱物」とまで呼ばれていたのです。

アスベスト付き金網

アスベスト付き金網というのは、金網の中央に円形にアスベストを被覆したもので、以前は理科の実験の定番でした。自分もアスベストという名前を知ったのは理科の授業で実験道具として習ったのが最初です。

アスベストの有害性

アスベスト塊

アスベストは、天然に存在する石ですが、非常に細い繊維なので空気中に飛散します。

そして、それを吸い込んでしまうこともあります。

ただ、アスベストを吸い込んだからといって、何か症状が出るわけではありません

せいぜいせき込むくらいです。

実は、これがアスベストの怖さです。

中皮腫というがん

吸い込んだアスベストは、肺の奥に突き刺さり、その刺激によって、中皮腫という治療困難ながんを発症します。

このときの潜伏期間が、なんと20~60年もあるのです。

吸ったからといって、すぐに症状がでるのではなく、忘れたころにいきなり死に直結するような病気を発症するのです。

すぐに症状が出るものなら自分でも対策しますし、危険性もすぐにわかるので、すぐに規制されます。

アスベストの被害が広がったのは、この潜伏期間の長さが大きな原因です。

この特徴を指してアスベストは「静かな時限爆弾」とも呼ばれています。

アスベストの有害性 その他

アスベストが引き起こす病気は中皮腫だけではありません。

石綿肺と呼ばれる病気を発生させることもわかっています。

石綿肺は、長期間にわたってアスベストを吸い続けた人がかかる病気で、肺が硬くなって呼吸困難に陥るものです(その後石綿肺の人は肺がんを起こしやすいことも判明しました)。

石綿肺の国内での発症例は1927年と古く、危険性も知られていましたが、対策は行われませんでした。

1972年、73年には、労働者の安全を守る「労安法」、環境汚染物質を規制する「化審法」が相次いで制定されますが、アスベストは規制されませんでした。

人工的に作られる化学物質が対象なので、自然に産出されるアスベストは対象外なのです。

そのため、中皮腫の前に危険性が指摘されていたにもかかわらず、放置されてしまったのです。

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アスベストが使われていた時期

アスベストは、日清戦争後に主に軍事用途として使われ始めます(最大手は「日本アスベスト」現在の「ニチアス」です)。

そして第二次世界大戦後、民間の用途にも使われ始めます。

アスベストはほとんど輸入に頼っていたのですが、その輸入量が一番多かったのが1974年の35万トンです。

1974年といえば45年前です。中皮腫の潜伏期間が20~60年なので、今でも潜伏期間内です。

そう考えると、過去の問題として済ますことができないことも理解できるでしょう。

その後、少しずつ規制が始まって使用量は減りましたが、2004年に全面使用禁止になるまでアスベストが使われていたのです。

2004年からアスベストを1%以上含むものは、製造・輸入・譲渡・提供・使用の全てが禁止され、2006年にはアスベストを0.1%以上含むものに拡張されました(一部製品を除く)。

参考資料:厚生労働省の発表資料(pdf)

アスベストの残された問題

アスベストが使用禁止になったとはいっても残された問題は数多くあります。

その中で大きなものを見てみましょう。

これからの発症者

中皮腫の潜伏期間からすると、今後も発症者が増えて2025~2030年にピークを迎えると予想されています。

アスベストの被害は終わったものではなく、これから被害者が増えていくのです。

他人事ではありません。

記憶も古く、いつアスベストを吸ったのかわからない人が発症した例もあります。

自分もアスベストが大量に使われていた時代を過ごした世代なので、その被害者になる可能性が十分あるのです。

新規のアスベスト被害者の発生

アスベストが使用禁止になったので、新たにアスベストを吸入する被害者は出ないと思われがちですが、そうではありません。

アスベストを使った建造物が、まだたくさん残っています。

ほとんどは、断熱材、防火材、防音材として壁の中に入っているので、通常は直接吸入することはありません。

しかし、壁が損傷したりして吸い込む可能性はあります。

そして一番怖いのは、災害です。

震災で多くの家屋が倒壊すると、大量のアスベストが飛散します。

それを吸って、数十年後に発症する人がでる可能性もあるのです。

※吹付アスベストというアスベストがむき出しになっている壁は1975年に禁止されましたが、40年以上経ったいまも残されている場所もあるそうです。
これは、その場所を頻繁に通るだけで発症する可能性がある危険なものです。

建物の解体

アズベストを使った家屋もそのうち解体されることになります。

このとき解体業者だけでなく、周辺住民も危険にさらされることになります。

アスベストを使った建物の寿命が尽きて解体される時期は、これからピークを迎えます。

アスベストを含む家屋の解体に関しては

  • 解体業者を守る労働安全衛生法
  • 周辺住民を守る大気汚染防止法
  • 廃棄するときに無害化する廃棄物処理法

など多くの法規制が定められています。

きちんと法律を守って、ミスやトラブルがないように充分配慮して、二次被害を出さないようにしてもらいたいものです。

※あえて書くのは、法律を守ると大がかりで費用のかかる工事になるので、悪徳な手抜き工事が横行することを心配しているからです。

最後に

自分は化学の人間で、化学製品を製造販売する立場です。

ですから化学品の危険性を必要以上に煽る風潮を好ましく思っていません。

もちろん、本当に気をつけないといけない物質は沢山あります。

ただ、リスクの低い薬品の危険性を煽ることで、本当にあぶない物質の危険性がかすれてしまうことの方が心配です。

ですから、危険性が立証されていて、毎年数千人の方が命を落としているアスベストを採りあげ、その危険性を強調しました。

また、アスベストは人工的に合成されたものではなく、自然に産出されるものです。

危険な物質に合成品も天然品も関係ありません。どちらであっても危険なものは危険です。

「天然由来だから安心」という言葉に騙されないようにして下さい。


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