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カーボンナノチューブとは何か? 世界を変えるかもしれない究極素材

カーボンナノチューブ

カーボンナノチューブという物質を知っていますか?

炭素でできた目に見えないほど小さなチューブ状の物質で、私たちの生活を一変させるほどの可能性を秘めた材料です。

大量生産もされていて、少しずつ用途が広がり始めています。

究極素材とも言われるカーボンナノチューブの世界をのぞいてみましょう。

目次

カーボンナノチューブとはどんなものか?

カーボンナノチューブは炭素だけで構成されたチューブ状の物質です。

炭素が六角形でつながった網を切って、くるっと丸めて筒にした構造をしています。

グラフェン

丸める方向によって、3種類のカーボンナノチューブができます。

カーボンナノチューブ

構造を見てわかるように、分子レベル、ナノサイズのチューブです。

また、系が太いチューブの中に系が細いチューブが入った入れ子のようなカーボンナノチューブも作られています。

※実際には入れ子構造の多層カーボンナノチューブの方が先に発見されています。

カーボンナノチューブの性質

このカーボンナノチューブ、一体何が凄いのかその特性を簡単に紹介しておきます。

強度

カーボンナノチューブは、アルミニウムの半分の軽さで、鋼鉄の20倍の強度を持っています。

以前に紹介した「セルロースナノファイバー」も高強度でしたが、それでも鋼鉄の5倍でした。

≫≫セルロースナノファイバー その特徴と製造法と広がる用途

カーボンナノチューブは、さらにその4倍も強いのです。

セルロースナノファイバーは、ブラスチックの強化材として使われていますが、カーボンナノチューブでは、それ以上の効果を示します。

電気的な性質

カーボンナノチューブは、丸める方向によって半導体のものと、導電体のものがあります。

導電体のもの一番の特徴が、細くても大電流が流せること。

なんと銅の1,000倍以上の電流を流すことができます。

熱的な性質

カーボンナノファーバーは、熱が伝わりやすい性質を持っています。

熱が伝わりやすいといえば金属です。

その金属の中でも熱伝導の高い銅と比べても、10倍もの熱伝導率を誇ります。

ゴムなどの熱が伝わりにくい物質に、カーボンナノファイバーをわずかに入れるだけで金属に匹敵する熱伝導が発揮されることが知られています。

タイヤなどに使えば、摩擦熱が逃げていくので寿命が長くなりそうですね。

カーボンナノチューブの用途

このような性質を持っているので、カーボンナノチューブは、様々な用途への展開が期待されています。

ここでは代表的な用途を紹介しておきたいと思います。

宇宙エレベーターへの応用

宇宙エレベーターは、軌道エレベーターとも呼ばれ、静止衛星と地上を結び、衛星軌道まで移動するというものです。

発想は古くからあり、SF小説やアニメにも登場しています。

ただ、宇宙エレベーターには静止衛星と地上を結ぶためには、現実の物質でははるかに及ばないほど軽くて強い材料が必要でした。

あくまでも空想上のもので、現実には不可能だとも言われていたのです。

カーボンナノチューブは、その不可能だと思われていた軽さと強度を持っていたのです。

カーボンナノチューブの発見以降、宇宙エレベーターは空想ではなく、実現可能なものとして盛んに研究されるようになりました。

複合材料の強化材

カーボンナノチューブをプラスチックやセラミックの強化材として使うことで、高強度の材料ができます。

複合材料の強化材と言えばカーボンファイバーが思い浮かびますが、カーボンナノチューブではそれをはるかに凌ぐ材料を作れるので、航空、宇宙の分野での応用が期待されています。

カーボンナノチューブを使った材料は、すでにスポーツ用品などに使われ始めています。

※カーボンファイバーも最初の応用はスポーツ用品からでした。

電子材料

半導体の特性を持ったカーボンナノチューブは、新しい半導体材料として期待されています。

また、導電性のカーボンナノチューブは、細くても電流を流せることから、微細電子回路の導電部に応用できる可能性もあります。

それ以外にも、電子的に興味深い特性が発見されているので、思わぬ用途が誕生するかもしれません。

電池材料

詳細は省きますが、リチウムイオン電池、燃料電池、電気キャパシターなどの用途でも従来材料より高い性能を示すことが知られています。

カーボンナノチューブこぼれ話

カーボンナノチューブには面白い逸話がありますので、少し紹介します。

カーボンナノチューブの発見は偶然から

カーボンナノチューブと同じように炭素でできている物質に「フラーレン」と呼ばれる球状の物質があります。

カーボンナノチューブは、そのフラーレンの研究の際に偶然発見されました。

実はフラーレンを作るときに、条件によってはカーボンナノチューブができていたのですが、ずっと、ゴミ、汚れとして、片付けられていたのです。

実は、その厄介なゴミが、カーボンナノチューブという宝だったのです。

≫≫フラーレンとは? 無限の可能性を秘めた炭素物質

カーボンナノチューブを溶かすもの

カーボンナノチューブを液体に溶かすことができれば、不純物を取り除いたり、加工したりすることが簡単になります。

でもカーボンナノチューブを溶かすことができる液体は中々見つかりませんでした。

そのカーボンナノチューブを溶かす液体が九州大学で発見されました。

それが、これです。

サントリー伊右衛門濃いめ

ちょっと驚きです。

実際は、お茶の成分のカテキンが効果を表しているのですが、カテキンの濃度がちょうどよかったのが「伊右衛門濃いめ」だったのです。

半導体と導電体の分離方法

カーボンナノチューブには、半導体のものと導電体のものがあります。

製造するときには、両方できてしまうので、それを分離しなければなりません。

目にも見えない極小物質で、形も同じものを分離するのは大変です。

それに役立つのがこれです。

ところてん

ところてん、寒天です。

寒天の中にカーボンナノチューブを入れて、冷凍庫で凍結し、それを解凍した後に絞り出せば、半導体と導電体に分離できるのです。

カーボンナノチューブの安全性

最後にカーボンナノチューブの安全性について述べておきたいと思います。

ごく微少の細長い物質は、アスベストのように発がん性を示す可能性があります。

≫≫アスベストとは何?特性と有害性から問題点をわかりやすくまとめてみた

そのため、初期の段階からカーボンナノチューブの安全性評価が行われてきました。

結果は、残念ながらアスベストと同じような発がん性を示すことがわかりました。

プラスチックを添加したものを焼却すると、燃えにくいカーボンナノチューブだけが残り、空気中に飛散、吸引する可能性が指摘されています。

このことで、一般製品への利用が制限されてしまうかもしれません。

やはり、世の中いいことばかりではないですね。


カーボンナノチューブ

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