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光の速度は確定している? 誤差ゼロの定義値とは一体何なのか

光の速度
Shutterstock

真空中の光の速度は、秒速299,792,458メートルです。

実はこの数字、全く誤差はありません。

どれだけ精度を上げて測定しても、この光速は変わることがないのです。それも1983年から。

ちょっと不思議に感じるかもしれませんが、その理由を説明してみます。

目次

光の速度の精密測定の問題点

真空中の光の速度に誤差がないのは、相対性理論がどうのこうのとは全く関係ありません。

そこには、長さや時間を表す単位の問題があるのです。

長さの単位メートル

国際単位系(SI単位系)では、長さの単位はメートルで表すことになっています。

メートルは、地球の子午線の長さの4千万分の1と決められてました。

もちろん、これだけでは誤差が大きいので、子午線の定義を厳密にするなど、できるだけ正確にするよう工夫されていきました。

その後メートル原器というものが作られました。

白金90%とイリジウム10%の合金で作られた原器に標線が打たれていて、0℃での標線間の長さを1メートルとしようと決められたのです。

メートル原器(Wikipeda)

子午線の長さよりは正確ですが、メートル原器という特定のものに頼った定義です。

今の時代から考えると、原始的で誤差も無視できないレベルですが、他に方法がなかったのです。

それにしても、ほぼプラチナでできているメートル原器、いくらくらいするのか……などと下種なことを考えてしまいます。

時間の単位秒

長さ以上に大変なのが、時間です。

国際単位系では時間の単位は秒ですが、どうやって秒を表すのかが大きな問題でした。

元々、1日を24時間、1時間を60分、1分を60秒として決められていましたが、1日の長さ自体が変動するのです。

≫≫うるう秒って何? 次回はいつ? 太陽時・原子時・協定時・わかりやすい時間の話

これはクォーツ時計の誕生でわかったことですが、そのクォーツ時計にも誤差があります。

時間の単位「秒」にも誤差があるのです。

光の速度の精密さ

光の速度を測る試みは古くから行われていて、測定精度も向上していきました。

≫≫光の速度は空気中と水中どちらが速い? 最初に実験したのは誰?

その精度向上も限界を迎えます。

速度は「動いた距離÷かかった時間」で計算されます。

でも、距離を表すメートルにも、時間を表す秒にも、誤差があるのです。

そちらの誤差の方が大きくなると、速度を精度よく測定しようとすること自体が無駄になってしまいます。

光の速度は定義値

光の速度
Pixabay

長さや時間自体に誤差があるため、速度を精密に決めることはできません。

光の速度よりも、メートルとか秒という単位の方を精密にしなければならないのです。

時間の定義の変更

クォーツ時計にはかなりの誤差がありましたが、より精密な原子時計が誕生します。

秒をその原子時計で決めれば、かなり正確になるので、秒の定義が原子時計(セシウム原子時計)によるものに変更されたのです。

原子時計にも誤差はありますが、非常に小さいため現在でも基本的に同じ定義を使ってます。

もちろん、今後更に精密なものに変わる可能性はありますが。

≫≫秒の定義が変わる? スカイツリーの実験と光格子時計の衝撃

長さの定義をどうするか?

原子時計の誕生で、時間はかなり正確に決めることができるようになりました。

でも、長さの方はまだまだです。

真空中の光の速さは、秒速299,792,458メートルと有効数字9桁までわかりました(長さはメートル原器基準ではなく特定の光の波長を基準にしたようです)が、長さが決まらないとこれ以上の精度は無理です。

真空中の光の速度が有効数字9桁までわかっている……。

これを逆に使ってやろうという発想が生まれます。

光の速度を秒速299,792,458メートルと決めてしまうのです。

そして、原子時計を使った時間を使い「光が1秒間に進む距離の299,792,458分の1を1メートルにする」と光速を使ってメートルを定義することになったのです。

メートルの定義がこうなっているので、光の速度は秒速299,792,458メートルぴったりです。

これを「定義値」と呼び、変更されない値です。

もし光の速度をより正確に測れるようになると、光速ではなく1メートルの精度が上がるのです。

定義値が増えた?

国際単位系の定義は、2019年に大きく変更されました。

唯一、単位の基準に物が使われていた「キログラム原器」も廃止され、光速のような定義値を使って単位を決めるようになりました。

そこで決まった定義値は、以下の通りです。

国際単位系(SI)は
基底状態にある摂動を受けないセシウム133原子の超微細遷移の振動数 ΔνCsが 9192631770 Hz
真空における光速度 c が 299792458 m/s
プランク定数 h が 6.62607015×10−34 J s
電気素量 e が 1.602176634×10−19 C
ボルツマン定数 k が 1.380649×10−23 J/K
アボガドロ定数 NA が 6.02214076×1023 mol−1
周波数 540×1012 Hz の単色光の発光効率 Kcd が 683 lm/W
である単位系である

Wikipeda

定義値が一気に増えました。

これらの定義値の測定精度が上がれば、長さや重さや温度など、これまで基本単位とされてきたものの精度が上がり、定義値の方は変わりません。

科学の進歩によって精度の高い測定が可能になり、それまで基本単位と呼ばれていたものの不正確さが問題となってきたことで、単位に対する考え方が大きく変わったのです。

ちなみに物理学では、プランク単位系という光の速度やプランク定数などを1と置いた単位系を用いることがあります。新しい単位の定義は、メートルやキログラムなど馴染みがある単位にできるだけ変化がないようにしてはいるだけで、考え方はプランク単位系に近いのかもしれません。

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