ブラックホールはブラックではない? ホーキング放射とは何か

前回の記事『ブラックホールとは何か?歴史を辿るとわかりやすいので挑戦してみた』で、ブラックホールについて簡単に説明しました。

ブラックホールは光さえも逃がさない、全てを飲み込む穴のようなものです。

しかし、ブラックホールの研究が活発になった1970年代から、意外な特性が次々とわかってきました。

今回は、そのことについて説明していきます。

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ブラックホールは本当にブラックなのか?

ブラックホールは、光でも逃げられず吸い込むだけの存在だと考えられていました。

重力の理論である一般相対性理論を使うと、そういう結果が導かれるのですから当然です。

そこに新しい光を当てたのが、あの有名な物理学者です。

スティーヴン・ホーキング博士

ホーキング博士

その有名な物理学者とは「スティーヴン・ホーキング博士」のことです。

ホーキング博士は、学生時代に筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症して、車いすを使い、合成音声で会話しながら、研究を続けてきた有名な物理学者です。

発症から5年くらいで死に至るという難病を抱えながら、50年以上物理学の第一線で活躍されました。

前の記事『ブラックホールとは何か?歴史を辿るとわかりやすいので挑戦してみた』では、「ペンローズ・ホーキングの特異点定理」を紹介しました。

この名前になった「ホーキング」はもちろんスティーヴン・ホーキング博士のことです。

ホーキング放射とは

ホーキング博士は1975年に、ブラックホールのホーキング放射と呼ばれる理論結果を提唱しました。

ブラックホールがエネルギー(電磁波)を放射するというものです。

光は電磁波なので、ブラックホールは光を放射すると言ってもいいでしょう。

ブラックホールが光を放射する

光すら逃れられないブラックホールから光が放射されるという何とも奇妙な結果です。

量子力学的な効果

ホーキング放射は、一般相対性理論だけではなく、量子力学というミクロな分野を扱う物理理論を組み合わせることで導かれました。

一般相対性理論と量子力学の両方を完全に説明できる理論は、まだ未完成なのですが、部分的に適応することでこの結果を得たのです。

ホーキング放射の特徴

物体は、温度に応じた波長の電磁波を放出しています。

これを熱放射とか熱輻射と呼びます。

人間の体温で放射される電磁波は、赤外線領域なので目には見えません。

しかし赤外線カメラを使えば、真っ暗な場所でも人の位置がわかります。これが熱放射です。

ブラックホールのホーキング放射は、この熱放射と同じ特性(スペクトル)を持っています。

ですから、ブラックホールには温度があると言ってもいいでしょう。

そして、ブラックホールは質量が小さいほど、温度が高くなるという性質を持っていることがわかりました。

ブラックホールの温度

温度があるといっても、太陽の数倍の質量を持つブラックホール(質量が小さく温度が高いブラックホール)でも、絶対温度で100万分の1 ケルビン程度です。
何もない宇宙空間でも約3ケルビンなので、どれだけ低温かわかるでしょう。

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ブラックホールの熱力学

このホーキング放射によって、物理の大きな課題がひとつ解決されました。

それは「ブラックホールの熱力学」です。

別記事で、マクスウェルの悪魔という存在を仮定すると、物理の基本原理、熱力学第二法則が破れて永久機関ができてしまうという話をしました。

※参照記事『物理に巣くうマクスウェルの悪魔とは何か? わかりやすく簡単な説明に挑戦してみる

その後の長い研究の末、マクスウェルの悪魔がいても熱力学の法則には反しないことが判明した経緯は、その記事で説明しました。

実は、ブラックホールも熱力学の法則に反するもので、もうひとつの「マクスウェルの悪魔」だったのです。

ヤコブ・ベッケンシュタイン

宇宙

この問題に手をつけたのが、ヤコブ・ベッケンシュタインというイスラエルの物理学者です。

ベッケンシュタインは、ブラックホールに特性を加えることで、熱力学と矛盾しないような理論を提唱しました。

その1年後に「ホーキング放射」が提唱されます。

熱力学は「熱」という言葉が入っていることからわかるように「温度」が重要な役割をする理論です。

「ホーキング放射」で求められるブラックホールの温度を、通常の物体の温度と同じように扱えば、ベッケンシュタインが予想した通りの結果になることがわかったのです。

その貢献も大きいので、ホーキング放射のことを「ベッケンシュタイン・ホーキング輻射」と呼ぶこともあるのです。

熱力学というもの

熱力学というのは、あまり聞きなれないと思いますが、物理の基本となる分野です。

一見熱力学に反するように思える「マクスウェルの悪魔」の研究から物理理論と情報理論が融合され、「ブラックホール」では一般相対性理論と量子力学の融合がもたらされました。

最近では、熱力学(と等価原理)から一般相対性理論が導かれることもわかっています。

量子力学とも非常に相性のいい理論です。

個人的には、全ての物理法則の元になっているものではないかと思っています。

ブラックホールの熱力学の発展

ブラックホールの熱力学は、さらに拡張されて、ブラックホールにとどまらず、大きな発展を遂げています。

そこから出てきた「ホログラフィック原理」は、「宇宙はホログラフィーのように平面に記された情報を投影したものに過ぎない」というSFのような結果をもたらしますが、かなり現実味の高いものとして議論されています。

ブラックホールは、重力を表す一般相対性理論と、ミクロの現象を表す量子力学と、物理とは関係ないように思われる情報理論を結びつける鍵だったのです。

これからも、ブラックホールは物理の新しい側面を見せ続けてくれるかもしれません。


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