放射冷却とは何か? よく晴れた日の早朝に冷え込むわけ

「明日は放射冷却によって冷え込むでしょう」

このように、天気予報で放射冷却という言葉を聞くことも多いはず。

一体、放射冷却というのはどんなものでしょう。

わかっているようで意外と知らない放射冷却について、簡単に説明してみます。

物理用語での放射冷却

放射冷却という言葉は、物理用語と気象用語で違う使われ方をしています。

まず最初に物理用語での放射冷却から説明します。

物質は、温度に応じた電磁波(光)を放射しています。

エネルギーを放出するのですから、当然温度が下がり、これを放射冷却と呼んでいるのです。

逆に、周囲から電磁波を吸収して温度が上がることもあります。

このように、放射と吸収によって起こる熱の移動は、「輻射熱」と呼ばれ、身の回りの暖房機器などにも使用されているものです。

放射と吸収が釣り合っていると、温度が一定に保たれる定常状態になります。

地表の放射と吸収

気象用語の放射冷却を知るために、この放射と吸収を地表にあてはめて考えてみましょう。

太陽が出ているとき

昼間の太陽

昼間は、地面に太陽の光が当たっています。ですから地面は太陽からの光を吸収して温度が上がっていきます。

地表も温度に応じた電磁波(赤外線)を放出しているので、それによる熱の発散もありますが、太陽光吸収の方が支配的です。

また、熱くなった地表から周囲の空気に熱が伝わり、気温も上がっていきます。

輻射熱で温度が上がり、周囲の空気へ熱を与えて温度が下がる、そのバランスで地表の温度が変わっていきます。

また、風があると地表で温められた空気が流れていき、かわりに温度の低い空気が地表に接するようになるので、地表は冷却されやすくなります。

太陽が出ていないとき

夜の月

夜間は太陽からの光はありません。

まずは、地表からの赤外線の放出と、周囲の空気との熱のやり取りだけを考えてみましょう。

地表から放出された赤外線の多くは、宇宙空間へ逃げていきます。

輻射熱は放出するだけですから、それによって地表の温度は下がっていきます。

地表と空気との熱の移動はお互いの温度によって変わってきます。

地表より空気の温度が低いときには地表から空気へ、空気の温度が高いときには空気から地表に熱が移動します。

そして、風が吹くとその熱移動が促進されます。

雲を考える

雲を考えると、状況が大きく変わります。

地表から放出された赤外線は宇宙空間に逃げていくのですが、雲があるとそれを一部遮ってしまうのです。

そして雲も温度を持っているので、赤外線を放出します。

その雲から放出された赤外線を吸収することで、地面の温度低下が鈍るのです。

放射冷却

空気も考慮する

空気も温度を持っているので、電磁波を吸収したり放出したりするはずです。

それは考慮しなくていいのでしょうか。

空気の主成分である窒素や酸素は、ほとんど赤外線を吸収、放出することがないので、無視することができます。

でも無視できないものもあります。

水蒸気です。

水蒸気は、気体の中では赤外線を吸収、放出しやすい性質を持っています。

ですから、空気中の水蒸気量が多い(絶対湿度が高い)と、雲の場合のように温度が低下しにくくなります。

水蒸気以外の気体

水蒸気以外にも、赤外線を吸収したり放出したりする気体があります。
そのような気体が空気中に増えてくると、冷却を阻害して全体的に温度が上昇します。
これが地球温暖化の原因とされる「温室効果」で、それを引き起こす気体を「温室効果ガス」と呼んでいます。
二酸化炭素が有名ですね。

気象用語の放射冷却とは

ここまでの説明で、気象用語での放射冷却を説明するのに必要な現象は出つくしました。

夜間は、地表は赤外線を放出して温度が下がっていきます。

でも、これまでの説明で次のことがわかるでしょう。

  • 雲があると温度が下がりにくくなる
  • 水蒸気が多いと温度が下がりにくくなる

逆に、雲ひとつない晴天で、空気が乾燥していると、温度が下がりやすいということです。

特に風がない場合は、地表の温度が下がり続けて、周囲の空気よりも温度が下がることができます。

空気が乾燥している冬に、雲一つない晴天で、風がない場合が、地表付近の温度が一番下がるのです。

この条件がそろったとき、夜間(特に明け方)の温度が極端に下がり、それを放射冷却と呼んでいるのです。

放射冷却で起きる現象

雲海

通常、気温は地表付近が一番高く、上空に行くほど温度が下がっていきます。

しかし、放射冷却が起きた場合、地表付近の温度が上空よりも低くなる逆転現象が起きます。

それによって起きる現象も色々あります。

霧の発生

温度が下がると、水蒸気が気体でいられなくなり、小さな水の粒になります。

通常は、温度の低い上空で雲として観察されるものです。

しかし、地表付近の温度が低いと、地表で水滴が発生します。

放射冷却が強いとき(水蒸気量とのバランスもありますが)、深い霧が発生しやすいのです。

温度が低い地表に近い部分だけに深い霧が発生するので、山の上などから見ると「雲海」になります。

≫≫参考記事:絶対湿度とは何だろう? 普段使っている湿度との違い

音の伝達

放射冷却が強いときには、遠くの音がよく聞こえることがあります。

これは、温度の低い地表より上空の方が音速が速くなることが原因です(音は温度が高いほど、早く伝わる性質があります)。

音は波で、波は速度が違うと曲がって伝わるという性質があります。

放射冷却で地表の方が温度が低いと、音は上空から曲がって伝わることができるので障害物を避けて遠くまで音が聞こえるのです。

音

上空にいくほど気温が低いことがほとんどなので、たまに温度の逆転現象が起きると普段見られない現象が起こるのです。