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反作用遠心力(Reactive centrifugal force)とは一体何なのか?

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英語版のWikipediaに ”Reactive centrifugal force” という項目があるのを見つけました。日本語にすると「反作用遠心力」といったところでしょうか。

Centrifugal force(遠心力)とは別項目です。全く違うものとして扱われているのです。

意味合いの違う2つの 遠心力(Centrifugal force)があって、それを区別するための表現です。

この「反作用遠心力(訳語はこれでいのかな?)」とはどんなものか説明してみます。

目次

ひもにボールをつけて回転させる

ボールにひもをつけて回転させるという単純な例で説明してみましょう。

力が何も働いていない場合、ボールは等速直線運動をします。ボールを円運動させるためには、運動方向と直角の方向に力をかけて方向を変えなければなりません。

この力を向心力と呼びます。

ボールの回転運動と向心力

この場合の向心力は、ひもがボールを引張る力(張力)です。

ひもがボールを引張るとき、作用反作用の法則でボールはひもを引張ります。

これを「反作用遠心力」と呼ぶのです。

連続体の作用反作用の法則

反作用遠心力を簡単に説明しましたが、すんなり納得できた人と納得できない人に分かれたのではないでしょうか?

納得できない人は、向心力の反作用を中心の向心力(実際はわずかながら中心部も回転している)だと考えているのでしょう。

間違いとは言えませんが、これだけでは説明しきれないことがあります。

ボールを回転させるとき、ひもは引張られます。ゴムひもを使えば引張られて伸びるのがはっきりわかるはずです。

ひもが引張られる力はどこからきたのでしょうか?

ボールがひもを引張っていると考えるしかありません。

ひもにかかる力

反作用遠心力とひもの張力をもう少し詳しく書いてみます。

反作用遠心力と張力

青い矢印が向心力に相当するもので、赤い矢印が反作用に相当するものです。この反作用の赤い力がひもを引張っているのです。

ここでひもの一部を取り出してみます。

図の黒い部分だけを取り出してみると、その部分は両側から引張られています(赤い矢印)。

そして、その反作用として両側のひもを引張っています(青い矢印)。

ひもの一部にかかる力

ひもの各部分(各点)にこのような力が働いているのです。全部矢印を書くことはできません。

そこで、ボールに接する点での力だけを図示したのが反作用遠心力を示した図なのです。

ちょっと違う図で説明してみましょう。

遠心力と向心力
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おもりをバネで繋いで回転させたものです。このときバネが伸びます。

このバネを伸ばす力はなんでしょうか。

これが反作用遠心力なのです。

剛体としての近似

ひもは反作用遠心力によって引張られています。しかし、両側から同じ力で引張られているので動くことはありません。

運動には何の影響も与えない力なのです。

物理では物体を変形することのない剛体として扱うことがよくあります。剛体では両側から同じ力が働いていても何の変化もありません。釣り合ってゼロになるだけです。

しかし、実際の物質では両側から引張られると、内部に応力という力が発生して歪が発生します。

力は釣り合って運動には変化はありませんが、物質内部に変化があるのです。

ばねのようにあきらかに剛体ではないものなら、「バネが伸びる」という変化がはっきりわかるでしょう。

物質の運動をよく知っている人は運動に影響ない力を無視することになれていて、反作用遠心力を簡単に納得できないかもしれません。

逆に物質の変形や応力などを扱っている人にとっては当然のことに思えるでしょう。

少し文化の違いを感じます。

惑星の軌道の反作用遠心力

天体の運動では、反作用遠心力はどのようになるのでしょうか。

惑星が公転している場合、重力が向心力になります。

ひもで引張る場合力は局所的に働きます。しかし重力は遠隔的な作用です。恒星と惑星の間はただの空間ですから、惑星の向心力の反作用は恒星に働く重力になります。

惑星軌道の遠心力

反作用遠心力は、あくまでも物質を引張る力なので、重力が向心力になっている場合には現れないのです。

反作用遠心力と遠心力

それでは、反作用遠心力と呼ばない単なる「遠心力」とはどんなものでしょう。

反作用遠心力と何が違うのでしょうか?

反作用ではない遠心力とは

遠心力について、Wikipediaでは以下のように書かれています。

遠心力(えんしんりょく、英: centrifugal force)は、慣性系に対して回転している回転座標系において作用する慣性力の一つである。

Wikipedia

慣性系というのは、ニュートンの力学が成立するような視点(座標)のことです。

その慣性系に対して回転している視点で見た時に現れるみかけの力のひとつが遠心力です。

なぜ回転している座標とかいう変わった視点を使うのか不思議に思われるかもしれません。でも私たちはごく普通に回転している座標を使っています。

地球上での物体の運動は、地面を基準に表します。でも地球は自転し手います。基準とした地面自体が回転している回転座標なのです。

回転座標で物体の運動を表すと、ニュートン力学はそのままでは成り立ちません。

でも見かけの力という仮想的な力を導入することでニュートン力学を適用することができます。そのひとつが遠心力なのです。

他に回転系で現れるみかけの力として「コリオリの力」などがあります。

≫≫コリオリの力とは何か? 北半球で台風が反時計回りになる訳

遠心力と反作用遠心力

英語版Wikipediaの “Centrifugal force(遠心力)” の項目には次のように書かれています。

Confusingly, the term has sometimes also been used for the reactive centrifugal force, a real inertial-frame-independent Newtonian force that exists as a reaction to a centripetal force.

Wikipedia

訳すと

“紛らわしいことに遠心力という言葉は、慣性系に無関係に向心力の反作用として実在するニュートン力(みかけの力ではない)ある反作用遠心力にも使われることがある。“

ここでの遠心力は、回転する座標で現れるみかけの力のことを表しているのですが、それとは違うみかけの力ではない反作用遠心力にも同じ言葉が使われていて紛らわしいと言っているのです。

日本でも同じような混乱があります。

遠心力は向心力の反作用ですか?

この質問にどう答えればいいのでしょう。

Yahoo知恵袋などでも質問されていて回答が分かれています(例:https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14260883034?__ysp=6YGg5b%2BD5Yqb)。

他にも色々なサイトをみてみましたが、混乱していることは間違いなさそうです。そして、YESと答える人、NOと答える人、両者とも自信満々のようです。

おそらく普段扱っている(得意分野での)遠心力が、どちらの意味での遠心力なのかによって答えが分かれ、両方とも当たり前に正しいと思っているのでしょう。

混乱を避けるためにも、日本語でも区別できるように言葉を変えるのが望ましいと思うのですが、皆さんはどう思いますか?

連続体での遠心力

ここでは触れませんでしたが、連続体力学という分野で考えると、「遠心力とは?」という問題は更に複雑になります。

「遠心力と反作用遠心力は全く別物と言っていいのか」という疑問も生まれます。

今回、例に挙げた糸が引張られる力、ばねを伸ばす力は、運動とは関係なく物体を変形させようとする力でした。これを扱うには本来連続体として考えなくてはいけないのですが、少しややこしくなります。

そのあたりの説明も書き始めてはいますが、どのような形で発表するか迷っています。

この記事の後に追記するのがいいとは思っていますが、長くなりそうで。

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