私たちが「時間」という言葉を使うとき、2種類の意味を使い分けています。

「8時15分」というように「時刻」を表す場合と、「通勤時間が2時間」というように「時間間隔」を表す場合の2種類です。

つい混同しがちですが、「時刻」と「時間間隔」は全く別のものです。

「時刻」と「時間間隔」の違いについての理解を深めるために、少し歴史を振り返ってみましょう。

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時刻とは何だろう

私たちが「時間」という言葉を使うとき、「時刻」と「時間間隔」の2通りの意味で使っています。

「時刻」とは、8時15分というように「いつ」を表すものです。

まずは、この時刻の歴史をさかのぼってみましょう。

時刻の始まり

大昔の人たちは、時刻をどのように表現していたのでしょう。

時刻という概念はなかったかもしれませんが、朝・昼・晩といった区別は当然していました。

太陽の位置で、一日のうちのどのタイミングなのか大まかに分割したものです。

明方・早朝・朝・昼前・昼後・夕・夕方・晩・夜中・深夜・未明といったようにもっと細分化した表現もあります。

これは「いつ?」という問いに「昨日の夕方」と答えることもあるように、いつを表すもです。

これが時刻の始まりです。

最古の時計

最古の時計は日時計です。

柱を建てて、その影の位置で時刻を表すものです。

古代のエジプトやメソポタミア文明は、すでに日時計を使っていたことがわかっています。

時計を使って、「いつ」を表しているのですから、立派な「時刻」です。

日時計の精度

現在では、日時計を使うことはありませんし、おもちゃのような扱いです。

でも、その精度は馬鹿にできません。

ふたつの日時計を持ってきて、それぞれの時計で読み取った時刻を比べても、ほとんど誤差はありません。

精巧に作られた日時計では、1、2分レベルです。

日時計以外の時計で、1日で数分レベルの誤差を達成できたのは、17世紀の振り子時計(の精度が向上していった後)からです。

紀元前2000~3000年には使われてた日時計に追いつくのが17世紀です。

また、振り子時計は、1日、1週間、1か月と時間が経つにつれて誤差が積み重なって差が大きくなっていきます。

でも日時計は何日、何年経っても誤差が大きくなることはありません

そう考えると日時計の精度の凄さがわかるのではないでしょうか?

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日時計を使った時刻

日時計の影の位置に目盛りを打って、それを読み取れば時刻を表すことができます。

日の出のときの影の位置から、日の入りの位置までを、12等分すると現在に近い時刻を表すことができます。

そうすると夜も同じように表したくなります。

どうやって図るかは別として、夜も日の入りから日の出までを同じように12等分すると1日の時刻が決まります。

不定時法

日時計での時刻は、日の出から日の入りまでを等間隔に分割したものです。

でも、現在の時刻で言えば、日の出、日の入りの時刻は季節によって変わります。

日の出から日の入りまでの時間間隔を12時間と呼ぶとすれば、同じ12時間でも季節によって長さが変わることになります。

また昼と夜でも長さが違います。

夏は昼間の12時間が長く夜の12時間が短くて、冬は昼が短く夜が長くなります。

このように、時間間隔が変わるような時刻の表し方は「不定時法」と呼ばれています。

不定時法は時刻なのか?

現在の感覚でいえば、不定時法を時刻と呼ぶのはおかしいと感じるかもしれません。

でも、日の出とともに起きて、日の入りとともに寝るという生活をしているのなら、不定時法の方が自然なのかもしれません。

それよりも大事なのは、時刻は大勢の人に共有されなければならないことです。

明日10時に集まろう

という場合、全員が10時という時刻を知ることができなければ、意味がありません。

不定時法なら、いつも太陽を見ていた昔の人なら、ちらっと太陽を見るだけで大体の時間がわかります。

もっと正確にするなら、各自が日時計で確認できます。

このように共有できることが「時刻」で最も重要なことなのです。

不定時法の時刻は、その条件を満たしています。

時計の開発と時間

砂時計

とは言っても、日時計には大きな欠点があります。

夜は使えませんし、太陽が出ていなければ昼間でも使えません。

そのため、日時計以外の時計が色々開発されました。

水時計

古くから使われていたのが水時計です。

下の方に小さな穴が空いた水溜に水をいれ、穴から水が漏れて水面が下がっていくことを利用したものです。

紀元前1400年頃にエジプトで作られた水時計が最古のものとされていて、中国でも紀元前1000年頃には水時計が使われていた形跡があります。

ギリシャでは紀元前4世紀にプラトンが水時計を作ったことをきっかけに改良が続けられて精度が上がっていきます。

中国でも水時計の改良が進み、11世紀には ”水運儀象台” という有名な水時計が作られました。

水運儀象台は、高さが10メートル以上もある巨大なもので、単なる水時計ではなく精密な機械のような仕組みを兼ね備えたものです。

その他の時計

水時計よりも簡単な時計としては、ろうそくなどに火をつけて短くなっていくことで時間を読みとる「火時計」があります。

ろうそく以外にも、縄や線香など、地域に応じて色々なものが、火時計として使われていました。

また、もっと手軽なのが「砂時計」です。

砂時計が考案されたのは8世紀、実際に使われ始めたのは13世紀からですが、用途によっては現在でも使われている息の長い時計です。

船で航海するときにも、出航からの時間を知るためにも砂時計が使われていたようです。

時間を測る時計

日時計は「時刻」を測る時計でしたが、それ以外の時計は「時間間隔」を測る時計です。

水時計では排出開始、火時計では点火、砂時計ではひっくり返す、これがスタートです。

そのスタートからの時間間隔を測る仕組みになっています。

ですから、太陽の位置で「時刻」を確認して、スタートのタイミングを合わさないと、時刻を知ることはできません。

時計には必ず時刻合わせが必要なのです。

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定時法

時間間隔を測る時計は、時間間隔が変化する不定時法では機能しません。

そのため、1日を等分割する定時法が使われ始めます。

現在の言葉でいうと、地球の自転を24分割したものを1時間として表すような方法です。

天文学や、星の観察で位置確認する航海では、定時法でなければ観測ができないので、早くから定時法が使われました。

だからと言って、不定時法がなくなったわけではありません。

定時法は、時計がなければ時間がわかりません。

きちんと時刻合わせができている時計を、誰でも見れる環境がなければ、時刻の共有ができないのです。

時計の精度がまだ低く、一般にも出回っていない時代には、定時法は日常生活では使い物になりません。

機械式時計

時計が一般に広がる大変さを、ヨーロッパの機械式時計の開発から知ることができます。

14世紀にヨーロッパで最初に作られた機械式時計は、重さが1~2トンもあり、製作費は現在の価値で1億円はくだらないというものです。

それでいて1日で誤差が1時間もあるようなものです。

14世紀でも、このようなレベルです。

誰もが時刻合わせされた時計を確認できるようにすることが、いかに大変なのかわかってもらえたのではないでしょうか。

この時期の機械式時計は、錘が重力で下がっていくことを利用したものです。

不定時法から定時法への移り変わり

時刻は、不定時法から始まりましたが、現在は定時法が使われています。

この移り変わりの過程をみていきましょう。

まずは、不定時法と定時法の特徴を復習しておきます。

不定時法の時刻

不定時法では、太陽の位置でAさんもBさんもCさんも大体の時刻がわかりますし、日時計を使えばもっと正確に時刻を共有できます。

でも、夜や雨の日の時刻はよくわからないという欠点があります。

定時法の時刻

夜や雨の日でも時刻がわかるようにするためには時計が必要で、時計は時間間隔を測るものなので、必然的に定時法になります。

しかし定時法の時間は時計を見なければわかりません。

時計が普及して、時刻合わせされた時計を誰もが見れる環境にならないと意味がありません。

不定時法のいいところ

不定時法の始まりは、朝・昼・晩といった表現でした。
これは「いつ」を表す言葉として今でも使われています。
時刻がわからなくても「昨日の夕方」と表現すれば、話は通じます。
それどころか、外の明るさ、夕焼けの色などの視覚情報とリンクしていてわかりやすいという利点があります。
ニュースでも事件が起きた時を「今朝未明」のように表現することが多くあります。
まだ暗い時間帯に起きた事件だとイメージしやすいのです。
「午前6時」では、そうはいきません。
昔の人は「卯の刻」といった時刻で、このようなイメージができていたのでしょうね。

定時法への切り替わり

ヨーロッパでは、夜間や雨の日でもミサの時刻がわかるという理由から古くから定時法への志向がありました。

中国でも、天体観測が政治を決める重要指針だったので、王朝では古くから定時法が使われています。

とは言っても、きちんと定時法のシステムができあがってたわけではありません。

定時法にしたいけど時計がないという理由で、巨大で莫大な費用がかかる機械式時計や水時計を作っていったのです。

本当に時計が普及して、一般まで定時法がいきわたった時期はよくわかりませんが、17世紀の振り子時計の発明以降ではないでしょうか。

不定時法を使っていた国

ヨーロッパや中国では、国の中枢では早くから定時法を採用しました。

逆に長く不定時法を使っていた国もあります。

例えば、日本です。

江戸時代の日本は不定時法でした。

戦国時代には、ヨーロッパから定時法の文化も時計も伝わっていましたが、江戸幕府が採用したのは不定時法だったのです。

その後、日本が鎖国している間に欧米で時計が進化し広くいきわたっていきました。

日本で定時法が採用されたのは、明治5年(1872年)、たった150年前のことです。

最後に

振り子時計以降の流れについても説明したかったのですが、長くなったのでこの辺りで一度締めようと思います。

時刻は、一日という周期の中でどの位置にあるのか示すものですが、それを知るためには時計が必要で、時計は時間間隔を測るもの(日時計以外)でした。

このように時刻と時間間隔という違うものを同じ時計で測るため、どうしても混同されやすいのです。

この2つをきちんと区別できれば、うるう秒などのシステムも理解しやすくなりますので、少し意識してみてはどうでしょうか?


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