鳥はなぜV字飛行をするのか? 物理に裏付けられた合理的なシステムだった 

鳥の一群が、V字を描いて空を飛んでいる光景をよくみます。

V字のフォーメーションを崩すことなく、一糸乱れぬ連携で大空を飛びまわる姿は見ていて気持ちいいくらいです。

でも、なぜ鳥はV字で飛行するのでしょうか?

そこには、きちんとした理由があったのです。

飛行機のV字飛行

鳥のV字飛行に入る前に飛行機の話をしましょう。

実は、第二次世界大戦中に、戦闘機でV字を組んで飛行すると燃費がよくなることが経験的に知られていました。

その理由は「渦」によるものだと考えられています。

飛行機が作り出す圧力差

飛行機が飛んでいるとき、翼の上と下で空気の圧力が変わります。

上側の圧力が低く、下側の圧力が高くなるように、翼が設計されているからです。

この圧力差によって、翼を上に持ち上げようとする力、揚力が発生するのです。

揚力

翼先端での渦の発生

胴体に近い部分は圧力差が揚力に変わるのですが、翼の先端では事情が違ってきます。

翼の外側には空間があるので、空気はそこを回り込むことができるのです。

圧力の高い下側から圧力の低い上に向けて空気が流れて、図のような渦が発生します。

渦

せっかく作りだした圧力差が揚力以外のエネルギーに費やされるのですから、渦は燃費を下げる厄介者です。

そこで、実際の飛行機では翼の先端にウィングレットという垂直の壁をつけたりして渦を少なくするように工夫されています。

渦を利用する

V字飛行は、この渦を利用したものです。

前の飛行機が作り出した渦の上昇気流を利用することで、後ろの飛行機は大きな揚力を得ることができます。

V字飛行

その上昇気流を捕まえるポジションがV字なのです。

鳥も同じ?

V字フォーメーション

鳥のV字連帯も、飛行機と同じ理由だと考えられています。

V字飛行では、先頭の鳥に負担が集中してしまいます。

渡り鳥が長期間飛ぶときは、ときどき先頭を入れ替えて、1羽だけに負担がかからないようにしていることも知られていました。

鳥と飛行機の違い

しかし鳥と飛行機は違います。

飛行機は飛んでいるときに常に渦を発生させています。

しかし、鳥の場合は翼を羽ばたかせて飛ぶので、翼を上から下に振り下ろすときにだけ圧力差ができて渦が発生するのです。

渦があるのは、羽ばたいた場所だけです。

後ろの鳥は、前の鳥が渦を作った場所に到達したときに、タイミングよく翼を羽ばたかないと効果がでません。

「さすがにそこまで精密なコントロールはできないだろう」

そう考えて、外敵の襲来に備えるなど、他の理由でV字飛行をしていると主張する人もいました。

鳥のV字飛行の観察

2014年、オックスフォード大学を中心とした研究チームが、ホオアカトキという渡り鳥の飛行を詳細に調べた結果が報告されました。

14羽の鳥にセンサーを装着し、鳥とともに移動しながらビデオ撮影をして解析したのです。

その結果、V字飛行では常に一定の間隔を保ち、前の鳥の羽ばたきから少し遅れるタイミングで羽ばたいていることがわかったのです。

先頭の鳥はいつ羽ばたくかわかりません。羽を動かさず滑空したり、思いついたように羽ばたいたりします。

後ろの鳥は、先頭の鳥の羽ばきを確認して、ちょうど上昇気流が発生した場所で自分も羽ばたいているのです。

自然の叡智は、凄いものです。

サボる鳥はいない?

V字飛行では、先頭の鳥が一番疲れるので、ときどき順番を交代します。

このとき「自分はしんどいのが嫌だから先頭にはいきたくない」と、後ろでサボる鳥はいないのでしょうか。

観察の結果、サボる鳥はいないことがわかりました。

みんな公平に先頭に立つのです。

「何分たったら交代する」とか「次は誰が先頭に立つ」とか示し合わせているわけはありません。

でも、まるで示し合わせたかのようにスムーズに交代しているのです。

人間も鳥に学ばないといけないのかもしれない、ふとそう思ってしまいました。